NHKの少しマニアックな旅番組「ブラタモリ」の書籍版が7月29日に発売になります(書店によっては28日または30日以降)。この記事では書籍の内容や魅力を紹介します。
ブラタモリ(1巻)長崎・金沢・鎌倉編
ブラタモリでは、歴史や地形を切り口にガイドブックには載らないスポットを多く紹介します。基本的には歩いて回るためのガイドブックです。
長崎編
長崎編では、幕末の長崎を象徴する観光地であるグラバー園へ寄らず穴場のドンドン坂を紹介します。ドンドン坂は長崎の町と海を見下ろす風情ある坂で、映画やCMにも採用されています。このほか、番組放映後に世界遺産に指定された三菱ジャイアント・カンチレバークレーンが紹介され、軍艦島ではなく池島炭鉱(写真)が紹介されます。
混雑が激しく指定のルートしか歩いてはいけない軍艦島に対し、池島炭鉱では古い炭鉱マンションが立ち並ぶ島内を自由に見学でき、炭鉱内の見学も申し込み制で可能です。長崎港が国際港になった理由や、石炭・造船産業の歴史を探りながら、通常より数段深い旅の楽しみ方を提案してくれます。
金沢編
金沢編の最大の見どころは金沢城跡の石垣の解説です。初代前田利家、3代目前田利常、5代目前田綱紀の3名の城主の石垣には際立った特徴があります。特に江戸時代に入り政情が安定したことを背景に、デザインを重視した前田綱紀の石垣は必見です。戦国時代から江戸時代へ世情の変化を後景に、3名の城主の生き様を学ぶことでなぜこのような石垣を作ったのかが理解できます。ここに通常の観光との大きな差が生まれます。このほか惣構(そうがまえ)、辰巳用水など見落としがちなスポットも紹介。
鎌倉編
鎌倉編は2回に分けて放送された回のため見どころが満載です。まずは鎌倉の特殊な地形を探るために訪問した浄光明寺と和賀江嶋。鎌倉の地形を深い部分で知ることができる穴場です。
目玉は、江ノ島から長谷寺(鎌倉大仏)への古い観光ルートです。鎌倉が一大観光地になった背景には江ノ島人気があります。古いルートにある極楽寺切り通し付近では鎌倉名物の「力餅」が販売されていますが、通常のガイドブックではなぜこの場所で「力餅」が売られているのかはまず分かりません。有名観光地の小町通りは番組では全く触れませんでしたが、書籍ではガイドブックとして機能するように「普通の観光地」の情報もコンパクトに併載されており旅行に便利です。
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ブラタモリ(2巻)富士山・東京駅・上田・沼田編
書籍版ブラタモリ第2巻の目玉は富士山です。
富士山編
富士山編での見どころはなんと言っても宝永火口です。ブラタモリでは太平洋側南方向からの登る富士宮ルートをチョイスしましたが、途中わき道にそれて絶景の宝永火口に寄ります。宝永火口はクルマで登れる富士宮口5合目から105分程度であり、登頂はちょっと考えている方にもおすすめです。途中に通る6合目雲海荘も文字通り雲海を見ることができます。もちろん山頂の剣が峰にも訪問しています。
富士山の回の1番のおすすめは、富士山がなぜ現在のようなゆったりとした裾野を持つ均整の取れた独立峰の姿になったのかを地学的に解き明かした点です。そこには富士山の噴火の歴史が密接に関わっており非常に興味をそそります。
東京駅編
東京駅を扱うのは番組の過去シリーズも含めて初めてではないため、ややマニアックに踏み込んだきらいがある回です。赤レンガの覆輪目地あたりはまだオーソドックスですが、行って来い階段、アロマ珈琲、江戸城石垣跡などは、かなりの建造物または江戸城マニアでないとがっかりするかもしれません。番組の目玉だった東京駅の地下トンネルが一般非公開というのも大きいでしょう。しかし普段東京駅を使う方や、旅行の際に少し時間ができた場合などには訪ねる価値があります。
上田編
上田編はこのブログ(健康じゃーな)でも記事にしました。真田丸効果で注目される信州上田ですが、県内に松本城や善光寺が控えるだけに、上田城跡はややインパクトに欠く観光地です。ブラタモリでは、上田城の東西南北の守りに絞って上田城の魅力を紹介しました。河岸段丘や巨大な堀の跡が見どころです。上田の観光はやや地味になってしまう傾向があるため、上の記事に紹介したご当地グルメや少し離れた別所温泉と組むのも一考です。ただし真田丸関連の歴史に深い興味があれば、長く滞在しても飽きないでしょう。
沼田編
群馬県沼田も真田丸ゆかりの土地です。河岸段丘の下に沼田駅があり、巨大な河岸段丘上に町がある世にも不思議な町で訪ねる価値はあります。このほか、城を守るための道の敷き方の名残や用水の工夫を紹介しましたが、真田丸特集として上田や「鶴瓶の家族に乾杯」と組んだ回であり全体にやや地味だったかも知れません。尾瀬、富岡製糸場、水上温泉などと組み合わせての訪問もおすすめです。穴場は大深度の土合駅や山あいの上牧温泉です。ただし真田丸関連の歴史に深い興味があれば、長く滞在しても飽きないでしょう。
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ブラタモリ書籍のまとめ