テレビ番組でも人気の秘境駅。豊橋から長野県へ向かう、全長6時間の飯田線は秘境駅の宝庫です。今回、飯田線の秘境駅6駅を1日で制覇する旅に挑戦しました!
秘境駅とは?
出典:テレビ東京『所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!』
秘境駅とは、ほとんど利用者のないたどり着くのも困難な駅です。かつては利用者がいたものの、時代の変化に取り残されてしまった駅。秘境駅を訪ねる旅は、青春18きっぷが発売される夏休みがおすすめです。
- 秘境駅とは?
- 飯田線と秘境駅
- 飯田線の秘境駅を1日で巡るには?
- 豊橋駅で前泊
- 豊橋駅6:00
- 中井侍駅8:19 飯田線の秘境駅①
- 小和田駅8:34 飯田線の秘境駅②
- 休憩 水窪駅10:21
- 千代駅12:04 飯田線の秘境駅③
- 為栗駅13:17 飯田線の秘境駅④
- 金野駅14:07 飯田線の秘境駅⑤
- 田本駅15:30 飯田線の秘境駅⑥
- 天竜峡駅17:16
- 天竜峡駅で宿泊なら
- 帰りに寄りたい駒ケ根(伊那)ソースカツ丼
- (まとめ)全長6時間の飯田線 秘境駅すべてを箱ダイヤで1日コンプしました
飯田線と秘境駅
JR飯田線は、愛知県の豊橋駅から、長野県の辰野駅(諏訪湖の南西)に至る長大な路線です。豊橋から辰野までの所要時間は、約6時間。もとは4つの私鉄をつなげたキメラ路線のため、細やかに駅が設置され、単線区間も多いので大変な時間がかかります。
- 豊橋から天竜峡駅までは、天竜川など川沿いのルートです。6つの秘境駅は全てこの区間にあります。
- 天竜峡駅から辰野までは、車窓に中央アルプスが見えるコースです。
- 飯田線の車窓は、豊橋発の場合、左側がおすすめです。ただし、午後は日差しで暑くなります。
飯田線の秘境駅一覧
- 小和田駅(こわだ) … 人気のある秘境駅。集落までは徒歩でしか行けず、1時間弱。駅舎には、小和田雅子さん成婚ブームの名残が見られます。利用5人/日(2016年)。
- 中井侍駅 (なかいさむらい) … 2軒の民家専用の出口があります。少し歩くと銘茶で知られる集落があります。利用8人/日(2015年)。
- 為栗駅(してぐり) … 難読駅。吊り橋と天竜川の広い川幅の景観がよく、お店や家はありませんが、穴場の観光地ムードのある駅。利用10人/日(2015年)。
- 田本駅(たもと)…【おすすめ】屈指の秘境駅です。崖にあり、車道どころか歩道も接続しておらず、登山道のみがつながる真打ちの秘境駅です。利用5人/日(2015年)
- 金野駅(きんの)… 山深く、崖の岩肌が印象的な駅です。利用0.53人/日(2015年)。
- 千代駅(ちよ)… かつて砂利の生産で栄えていた駅です。日本の里山の典型のような集落が近くにあり、ぜひ訪ねたい駅です。利用1名/日(2015年)。
飯田線の秘境駅を1日で巡るには?
K'z Lifelog ~青春18きっぷと乗り鉄のブログ~には、飯田線の秘境駅を1日で訪ねる行程が紹介されています。列車の本数が少ないため、すんなりと回るのは難しく、行ったり来たりしながら、なんとか1日でクリアする方法です(通称、箱ダイヤ)。下は、ブログで紹介されていた行程表を加工したものです。
東京から出発したため、東京→豊橋→天竜峡→辰野→甲府→東京の通しきっぷを購入しました。JRの運賃は、遠距離逓減(ていげん)法で計算されるため、長距離で買った方が安くなります。通し切符から外れる区間は、青字で示した6区間であり、車内精算しました。
車内では、上の図を見せながら説明しましたが、初老の車窓さんは困惑していましたので、事前に買っておくと良いかも知れません。夏休みなら青春18きっぷ、土日祝日ならJR東海の青空フリーパスが便利です。
小和田駅では2時間30分以上の待ち時間があります。周辺を探索しても30分程度で済みますので、今回は1度豊橋寄りの水窪(みさくぼ)駅にいったん移動し、また予定の行程に復帰しました。
使用したきっぷです。名古屋駅の印があるのは、名古屋城を見に名古屋へも寄ったからです。
豊橋駅で前泊
豊橋駅の出発は朝6時のため、前泊しました。豊橋の夜ごはんは、ご当地グルメの豊橋カレーうどんがおすすめです。カレーうどんの下に、とろろごはんが入っているという、驚きの組み合わせです。
豊橋では、コスト重視で古いビジネスホテルにしました。楽天トラベルの口コミは悪くなかったのですが、部屋に湯沸かしポットがあるのに、カップがない謎の仕様に戸惑います。写真に写っているのは、冷たい飲み物用のカップです。床のカーペットも汚れていましたが、フロントの対応が良いのが唯一のメリットでした。
少し値段は上がりますが、オープンしたてで大浴場もあるホテルルートイン豊橋駅前(楽天トラベル)の方が、万人向けでしょう。
豊橋駅6:00
豊橋駅を朝6時に出発します。乗り遅れると、全行程が崩壊しますので、緊張の一瞬です。電車は、中部天竜駅付近で少し混雑しますが、比較的空いていました。
中井侍駅8:19 飯田線の秘境駅①
2時間19分後、中井侍駅(長野県)に到着です。急な斜面に駅が設けられており、下には天竜川が流れています。
手前に、2軒の民家専用の出入口があります。集落は少し離れています。中井侍駅は、秘境駅とはいえ、民家があり人の気配がしますので、安心して訪ねられる駅です。
くわしくは、次の記事に書きました(記事タイトルはクリックできます)。なお、この記事では行程順、関連記事では豊橋駅から近い順に番号を振っています。
小和田駅8:34 飯田線の秘境駅②
6分間の乗車で小和田(こわだ)駅に戻ります。小和田駅は、小和田(おわだ)雅子さんご成婚の際に、さまざまなイベントがあり、その華やかな痕跡が残されています。しかし、駅周辺の建物は廃墟となり、最寄りの集落までは徒歩で1時間弱かかります。クルマやバイクでは、近づくこともできない駅です。
駅舎には、小和田雅子さんご成婚にちなんだものが、残されています。
駅舎内に見たことがないマークを発見。調べてみると、国鉄(現JR)の1978年のキャンペーンのマークでした。当時から、駅舎が改装されていないことを示す痕跡です。
高台にある小和田駅から、天竜川のほとりまで降りると、ミゼット(ダイハツの3輪自動車)の廃車が見られます。かつて小和田駅に車が到達できた痕跡とも言われています。
小和田駅から集落への道です。徒歩1時間弱あり、途中崖などもありますので、訪問の場合は、慎重に願います。
小和田駅の製茶工場跡
小和田駅そばにある2つの廃墟のうち、1つは製茶工場です。
周辺は土地が急峻なため、斜面に育つお茶が住民の暮らしを支えていました。耳をすますと、お茶の葉を攪拌(かくはん)する機械の音や、働く人の声が聞こえてくるようです。
ふと空を見上げると、飛行機が飛び去り、いっそう静寂が深くなります。
小和田駅を出発します。
休憩 水窪駅10:21
小和田駅では2時間半以上、下り電車を待つこととなります。ゆっくり散策しても時間が余るため、上り電車で豊橋方面に少し戻り、乗る予定の電車を待ちます。途中下車する候補の駅は複数ありますが、比較的大きな町である水窪(みさくぼ)駅にしました。
水窪駅です。駅は高所にあり、直下に水窪川を望む地形です。つり橋を渡り、集落へ行きます。秘境駅を巡っていると、このぐらいの町でも大都会に見えます。
水窪駅から徒歩数分の場所に、国盗り自慢という食堂兼土産物屋があります。食堂はまだ営業しておらず、名産の栃もちを昼ごはん代わりにしました。
※豊橋駅周辺で、お弁当を買ってゆくのがおすすめ。
水窪駅の集落にて。ゆとり世代の方は、ぜひ訪ねてください←
飯田線は、乗車区間が長く乗客が少なめのため、写真のような快適な車両が多く使われます。長時間乗車でも、案外疲れません。
千代駅12:04 飯田線の秘境駅③
水窪駅から約1時間で千代駅に着きました。写真は、千代駅を通過する特急伊那路号です。列車が来る時間でないのに警告音がなった場合、基本的には伊那路号が来ます。うまく撮影したい場合は、時刻表を調べておくと良いです。
※今回の行程では、水窪駅を11:06発の普通列車に乗りますが、この列車は水窪駅で上り(豊橋方面)の特急伊那路号と交換します。
千代駅は、秘境駅のなかでは、比較的緩やかな斜面に立地します。写真右は民家、その左は農機具小屋で、その向こう側に千代駅があります。駅の向こうは畑です。
千代駅の裏手の坂を数分登ると集落に出ます。ねぎ坊主です。千代駅周辺は、千代ねぎの産地でもあります。
※千代ねぎの収穫は秋です。
集落の高台には果樹園が広がっており、大きな空が見えます。
集落です。思ったより間口が狭く、軒を連ねる形となっていました。千代駅は、かつてコンクリートの原料となる砂利の産出で栄えた駅です。もしかしたらこの通りにはお店があり、人々で賑わっていたのかも知れません。耳を澄ますと、売り子の声や、子どもたちが通りで遊ぶ声が聴こえてくるようです。
集落は緑が深く、美しい新緑が見られました。千代駅には、日本の里山の要素がギュッと詰まっているので、外国人にもお勧めしたい場所です。
千代駅を出て、豊橋方面に戻り、為栗(してぐり)駅をめざします。
写真は、臨時急行飯田線秘境駅号だと思われます。秘境駅に長めの停車をしながら豊橋駅から飯田駅まで運転する列車ですが、当然多くの人が駅に降ります。秘境駅のムードはあまり感じられなくなりますので、できれば普通列車での旅がおすすめです。
為栗駅13:17 飯田線の秘境駅④
千代駅から約20分で、為栗(してぐり)駅に着きます。難読駅です。
為栗駅は、ホームからつり橋が見えます。お店も人家もありませんが、観光地のような雰囲気です。
為栗駅のすぐそばには、つり橋があり、蛇行する天竜川がまるで湖のように見えます。この先には、流れの関係で、豊橋方面へ下る船がいったん信濃(長野)を振り返る名勝・信濃恋しがあります。
為栗駅から徒歩5分という情報がありますが、実際には信濃恋しの観光案内板まで20分弱かかります(1キロ。行きは上り坂)。見学も含め、往復で最低でも50分間はみたい場所ですので、今回の行程表(待ち時間38分)では、走らない限り間に合いません。
信濃恋しの観光案内板は撮影できましたが、川面に降りる時間はなく、電車にも乗り遅れそうになりました。
※Googleマップの信濃恋しの表示の場所に観光案内板はなく、ふるさと味覚小屋と表示された場所に観光案内板があり、信濃恋しへの降り口があります。訪問の際は、ご注意ください。
つり橋近くから。
金野駅14:07 飯田線の秘境駅⑤
約20分間の乗車で金野(きんの)駅に到着です。金野駅は、秘境駅としては珍しく、駅前まで道路が通じています。
金野駅のトレードマークは、頭上にそびえる岩肌です。
金野駅から集落へと続く道路です。徒歩の場合1時間弱です。本来は集落周辺に駅を作ろうとしたようですが、地形的に難しく、この場所となりました。
田本駅15:30 飯田線の秘境駅⑥
田本駅は、飯田線の秘境駅でも、もっとも秘境度が高い駅です。豊橋方面は、すぐにトンネルとなりますが……
辰野(天竜峡)駅方面も、すぐトンネル。さらに左右は90度近い絶壁。
豊橋側のトンネルの上から見下ろすと、トンネルと急な崖に四方を挟まれた、まるで要害のような駅だと分かります。車道どころか、歩道すら接続していません。
地図を見ても、どの道も接続していないことが分かります。
田本駅と外界をつなぐ唯一のルートは、この急で狭い階段です。
階段は、登山道へとつながります。熊が出そうな雰囲気ですが、実際に2017年6月に目撃情報があるそうです。
徐々に高度が上がり、見晴らしが良くなります。もう少し歩くと道路に出るのですが、倒木があったため引き返しました。
この日は、いつもは利用していないという小中学生が利用していました。熊は心配ですが、めったにないことなのかも知れません。
天竜峡駅17:16
17時16分、11時間16分かけて秘境駅6駅をクリアーしました。田本駅にあった上の寄せ書きのように、このあと頑張れば東京に戻れます(22時36分新宿着)。スケジュール的にハードになりますので、余裕があれば天竜峡に泊まります。
天竜峡駅です。
天竜峡駅のすぐそばには、天竜峡舟下りの船着き場があります。
天竜峡駅で宿泊なら
天竜峡駅で宿泊なら、ちょっと離れたところにある湯元 久米川温泉がおすすめです。
周辺は田園や果樹園が広がる、絶好のロケーションです。
部屋は昔ながらの旅館。
夕食も昔ながらの旅館。メインは牛肉ですが、信州サーモンが印象に残りました。
家庭的な料理と凝った料理がバランスよく出てきます。
露天風呂は1階のため、景観は上空ですが、夜にはたんぼでカエルの合唱が始まり、非常に心地よい場所です。
湯元 久米川温泉は、天竜峡駅から送迎となり少し不便なため、1泊2食でも安く泊まることができます。
帰りに寄りたい駒ケ根(伊那)ソースカツ丼
帰りにぜひ寄りたいのが、駒ケ根(伊那)ソースカツ丼の店です。今回は伊那北駅の、たけださんを訪ねました。駒ケ岳が見えています。
たけだのジャンボソースかつ丼です。
肉屋でもあるたけだのソースかつ丼は、B級グルメとは言わせない、圧倒的な肉質です。しかも分厚い!
お皿に並べると、肉質の凄さが分かります。脂が十分に差す絶品です。自分のなかでは、生涯とんかつで1位でした。これを食べるためにだけ、行く価値もあります。
※肉はロースがおすすめです。
(まとめ)全長6時間の飯田線 秘境駅すべてを箱ダイヤで1日コンプしました
以上、全長6時間の飯田線 秘境駅すべてを箱ダイヤで1日コンプしました、でした。青春18きっぷを使えば安くコンプリートできます。夏休みにおすすめです。
※青春18きっぷは、大きな駅周辺の金券売り場でバラ売りもしています。また、天竜峡駅の北にある飯田駅まで新宿駅・名古屋駅から高速バスも出ています。
※周辺の観光は、天竜舟下り、千畳敷カール(駒ケ岳)、妻籠宿・馬籠宿がおすすめです。
関連記事には、さらに詳しい情報を載せています。通し番号は、今回の行程順ではなく、豊橋駅から近い順です。絞るなら、小和田駅、田本駅、千代駅がおすすめです。