2016年8月「食べログ」が炎上しました。ある店主が、広告を契約しなければ点数が下がると予告され、実際に点数が「操作」されたのとツイートしたことによります。
当ブログは、炎上騒動のあと9月まで、「食べログ」公式サイト上に、新点数と旧点数の両方のデータが残っていたことを発見しました(現在は新点数に統一)。
公式サイト:食べログ
食べログ「点数操作」で炎上 操作前後のデータが発見された!
筆者が熱海へ出かけた際、食べログのアプリを使用しました。その際にたまたま、古い点数と新しい点数の両方を見る方法を発見しました。
熱海で、人気トップのラーメン屋さんだった「石川屋」が4位に転落してしまいました(熱海駅1キロ以内、ラーメンで検索)。食べログでは、3.5点以上が良店の目安で、地方でも3.3点は欲しいのですが、石川屋は3.26点。以前はもっと高かった気がするのですが、過去の点数は知る方法がありません。しかし、……。
ひょんなところから、「点数操作」以前のものと思われる点数を発見。このデータは、決して古い画面のスクショではありません。熱海駅でなく、「熱海・ラーメン」で検索をかけると、食べログのデータベースから呼び出され、普通に出てきました。
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熱海駅×ラーメンで食べログ内検索 … 石川屋は3.26点
- 熱海×ラーメンで検索(行政区分で検索) … 石川屋は3.53点
※9月31日の数値。10月2日の15時頃には、出なくなっています。
石川屋の正式な点数は、あくまで3.26点です。行政区分で検索したときにだけ、別の点数が表示されます。これは、確実に断言はできませんが、「点数操作」以前の古い点数ではないかと思います。
「熱海駅」周辺のラーメン屋を検索すると、石川屋は3.26点。これは、石川屋のリンクをクリックすると出てくる、現行正規のデータと同じ。
「熱海」(行政区分)のラーメン屋を検索すると、石川屋は3.53点で1位。私の記憶では、2016年前半に石川屋は熱海で1位だったはず。
この謎の点数の正体は不明も、「点数操作」以前のものがデータベースに亡霊として残存しており、この世に出現したと考えられます。
食べログ「点数操作」で炎上 ほかの都市でも調べてみる~高崎編~
食べログの「点数操作」前後のデータが共存した時期があったのでしょうか? もしそうだとすれば、点数の推移を追求すれば、点数操作の有無がわかるはずです。
首都圏近郊のラーメン激戦区である群馬県・高崎を調べてみます。高崎周辺では、「支那そば まるこう」が、2016年前半には1位だったと記憶しています。実際に、姉妹ブログに2016年2月の点数が記録してあり、3.71点とかなりの高得点でした。
9月31日の数値です。かなり下がっています。
ここで、隠しコマンドの「高崎(行政区分)×ラーメン」で検索(駅名でなく、行政区分で検索します)。
3.67点! これは、2016年2月の3.71点に近いため、断言はできませんが、旧アルゴリズムの点数ではないかと思います。もちろん、同時刻に検索したものです。
石川屋とまるこうは、食べログ広告を断って点数を下げられた?
うちの会社でやってる店が、いきなり食べログ3.0にリセットされた。
— SEっKIぃ (@SEKKKIE) 2016年9月6日
理由は、食べログの契約更新で、食べログ側が押し付けてきた物を部分的に断ったから。
要するに食べログは、自分達の言いなりになる飲食店だけ点数上げるということ。
食べログ炎上の発端となった、広告を契約しなければ点数が下がると予告され、実際に点数が「操作」されたのというツイートです。
もしこれが事実だとすれば、熱海の石川屋と高崎のまるこうは、食べログ広告を断って点数を下げられたことになります。
しかし、現行アルゴリズムで、支那そばまるこうよりも点数が高く出ている4店舗はいずれも、広告契約店を示す、公式情報というタグがありません。すると、少なくともこの事例では、広告契約の有無と無関係な順位変動であり、話題になったツイートのような事象は発生していません。
熱海の人気店「うえ田」の点数の動き
写真:熱海の海岸や熱海銀座に近いうえ田
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熱海駅×ラーメンで食べログ内検索 … うえ田は3.35点
- 熱海(行政区分)×ラーメンで検索 … うえ田は3.42点【旧点数?】
熱海の石川屋とは別の人気ラーメン店、うえ田の点数は、「点数操作」によって3.42点から3.35点に微減しています。
しかし、「うえ田」は、公式情報のタグがありますので、食べログ契約店です。食べログの広告契約店であっても、9月頃、食べログの点数が落ちているということです
。この事象とは、話題になっているツイートとは、また別の可能性を示唆します。つまり、広告契約とは無関係で、単なる定期的なアルゴリズムの変動にすぎません。
熱海で食べログ点数が微減の「うえ田」、大幅減の「石川屋」
熱海で、食べログの点数が微減した「うえ田」(広告掲載店)、点数が大幅に減った「石川屋」に食べに行ってきました。
点数が微減し「うえ田」では、ラーメン780円を注文(写真は、チャーシュー増し)。
トンコツと鶏がしっかり感じられるものの、嫌みがないスープです。白く乳化しており、優しい味がします。チャーシューは、半生タイプでとても印象的。中太縮れ麺は、小麦の味がしっかり残り、硬すぎず適度なコシがあります。接客も良好で、テーブル席が多く、ゆとりがあるお店です。
食べログの点数が3.53点から3.26点に大きく下がり、熱海駅(1キロ圏)での順位が1位から4位に下がったのが「石川屋」です。ラーメン800円を注文。
お店はやや手狭で、昭和の喫茶店風です。ラーメンの風貌は昔ながらで、特に期待させるものではありません。しかし、スープが熱々で驚きます。油を熱して後から入れているのかも知れません。醤油の味も素晴らしいです。油がスープを覆う、雪国で見かける仕様で、チャーシューは、常に茹でたての味。
食べログ点数が微減の「うえ田」、大幅減の「石川屋」の比較結果
点数が微減の「うえ田」、大幅減の「石川屋」を比較すると、今風の人気ラーメンを食べたい人はうえ田、昭和風かつ高度なラーメンを食べたい人は石川屋となり、双方譲りません。
ただし、年配の地元の常連客が多い石川屋よりも、今風のラーメンを出し観光客も入っている上田のほうが、歴史は浅いものの口コミの投稿頻度は高めです。
食べログのアルゴリズムは非公開ですが、想像するに、近年の口コミの内容や投稿頻度に少し比重をかけるような変更があったのかもしれません。今回の順位変動は、アルゴリズムが働いただけ、というのが私の感想です。
今回の順位変動は、アルゴリズムが正しく働いただけと思う根拠
今回の順位変動は、アルゴリズムが正しく働いただけであり、広告の契約状況には無関係だと思う根拠は以下の通りです。食べログは、アルゴリズムを明らかにしていないため、あくまで状況証拠となることをお許しください。
① 熱海では、1位だった石川屋の順位が落ちたが、投稿頻度が少なく情報が古くなっている点への調整の可能性があり、広告未契約が要因ではないと考えられる。
② 熱海では、うえ田の点数が9月頃落ちたようだが、うえ田は広告契約店。
③ 高崎では、上位に大きな順位変動があったが、すべて広告未契約店。
そもそも食べログの根っこにある価値とは?
写真:熱海らしい坂の途中にある石川屋。
食べログは、飲食店から訴訟を起こされるなど何かと問題になるサイトで、良いイメージを持っていない方も多いでしょう。私自身も、食べログを使う前は、全く信用していませんでした。しかし、長く使うとその特徴は理解できます。
競合のグルメサイトAは、口コミがお店への応援でなければならない、という制約があります。この時点で、お店選びで失敗したくないという目的には、向いていません。また、競合のグルメサイトBは、実名口コミを原則としています。しかし、使えばわかりますが、ユーザーがかなり軽やかで、食べログのように、コメントの質を問う文化はありません。食べログには、確かに上から目線とも思える素人のコメントもありますが、総じてユーザーの側に立ったサイトです。
食べログ炎上騒ぎの原点にある誤認識
今回の食べログの炎上騒ぎでは、「広告を載せないと点数が落とされる」という認識が広まっているように思います。しかし、点数ではなく、検索の優先順位を落としますという話がそもそもです。
グルメサイト「食べログ」が炎上している。あくまで飲食店側の情報だが、食べログの点数(★の数)が一気に低下し、さらに「弊社予約サービス使わないと検索の優先順位を落とします」との連絡を受けたというのだ。つまり食べログ側に対してプラスになる行動(契約)を飲食店がとらないと、サイト内での扱いが低下するということである。
出典:http://buzz-plus.com/article/2016/09/07/tabelog-giwaku/
検索の優先順位というのは、「標準」のタグのことです。初めから広告優先と明記してありますし、並び順の基準も明らかにされています。
「標準」はどういう順番で並んでいるのですか?
A.食べログの広告サービスを利用しているお店が優先的に表示されています。「標準」検索では、情報を積極的に発信されているお店をより多くの皆様に紹介するという考え方に基づいて、食べログの広告サービスを利用して様々な情報を登録・掲載中のお店が優先的に表示されています。広告サービスのプランや使用する機能によっても優先順位は変わります。
出典:https://tabelog.com/help/faq_service/
広告の契約状況によって、点数が落ちる(変動する)という話は、そもそも存在していません。
また、「うちの会社でやってる店が、いきなり食べログ3.0にリセットされた」という話が混ざり込んでいるようです。しかし、該当店舗の総口コミ数は10~20程度。食べログのユーザーには常識ですが、食べログは全店が3.0からスタートし、かなりの数の口コミが蓄積しないと、点数は動きません。
アルゴリズムの変更で、何割かのレビュワーの評価が下がれば、3.0に下がっても何ら不思議はありません。私自身「食べログ3.0にリセット」の話を聞いて、いくつかのお店のページにすっ飛んでいきましたが、どこも口コミが少なく、むべなるかなと思っただけでした。食べログのヘビーユーザーなら、同じ感想でしょう。
なぜ食べログが叩かれるのか 理由は簡単です
なぜ食べログが叩かれるのか。理由は簡単です。
あなたがラーメン屋を開き、かなり力を入れた自信作が、ひどく批判された。その口コミに反論もできない。この状況に陥れば、頭に来てしまいませんか? 作ることにこだわることができる人は数多くいますが、批判を甘んじて飲み込むことができる人はとても少ないです。批判を受けて、その書き込みをした人やシステムに対して、分かっていないと反論し、プライドを保つ人が大半です。
例えば、この記事で紹介した「うえ田」は、各地のラーメン選手権などによく出場しています。
静岡ラーメンストリート2015に店を構えた「うえ田」陣営です。あなたがもしラーメン屋だったら、この場所に出てくる勇気はありますか? 強豪のラーメン店がひしめき、いつもの調理器具は使えない。飲食スペースは簡素。
・あんなのは宣伝したい人が出ているだけ。
・適当な調理場ではウチのラーメンは出せない。
・地元のお店にくるお客さんが大切。店を休みたくない。
どれも一理あります。しかし、口うるさいラーメン好きから厳しい評価を甘んじて受け、負けるリスクがあるイベント出店できるお店は、視点や立ち位置が少し違います。
写真:うえ田のつけ麺の麺。
熱海の「うえ田」の店員に、食べログの点数のことを尋ねてみたところ、以下のような答えが返ってきました。もちろん情が移らないように、レジで立ち話をしただけです。
・食べログはときどきチェックしている。
・多くの店の点数が変動したことは、お客さんからも指摘があるが、理由はわからない。
口コミや点数を操作できない食べログに対して、拒絶し批判するのでもなく、固執しやきもきするのでもない、しっかりとした立ち位置を感じました。根本はあくまでも、お店で出しているラーメンの味と技術にあるという視点から動かないように感じるのです。
食べログの評価から目を伏せて無関係を装うこともなく、不公正だと訴えることもなく、適切な距離を保っている様子がうかがえます。
写真:昭和の熱海が感じられる、石川屋
なぜ食べログが叩かれるのか 理由は簡単です。
以前から飲食店が、食べログに対し訴訟を起こしたり、ネット上に批判を書き込む動きがあります。このようなお店は、食べログでどう書かれようと、あくまで「根本はお店の料理であり、技術である」という軸がぶれていると考えられます。
批判を目にするのは誰もうれしいことではありません。コンテストにも出たくないし、順位なんてつけられたくない。しかし、インターネットの時代に、お店を一般に構えている以上、評価されるのは避けられず、そこに不本意なものも多く入ってきてしまうのは避けられない面があります。なんと言われようと日夜厨房に立ち、技術を磨いてゆくしかないのです。その精神性と覚悟があるお店は、食べログから適切な距離を取っているはずです。依拠しすぎず、余計な批判もしないということです。
少なくとも、自店の評価が落ちたからといって、世の中に対し、広告料払わなかったから落とされたと発信してゆくのはやめにしませんか?ヘビーユーザーですら、食べログの点数は参考程度とわきまえています。過剰に心配をしないでください。
もちろん食べログのレビュワーも、相手が生身の人間であることに想像力を働かせ、より適切な言葉を選んでゆく責務はあります。どんなレビュワーも(特に嫌な思いをしたとき)感情に任せた言葉を発したい気持ちは持っていますが、一呼吸置くことが大切です。
食べログが、現状でベストなサイトとは言えませんが、お店選びの基準としては、相対的に優位にあるのは明らかです。お店側とレビュワー側の人間性が、主観の世界から客観の世界へと成長してゆくときに、食べログはより確かな機能性と信頼性を得ていくものと考えます。
※お断り 10月2日の夕方現在、行政区域検索での別の点数(古い点数?)の呼び出しは上手く行かなくなっています。記事上のデータは、全て9月30日のものです。
(まとめ)食べログ「点数操作」で炎上 広告拒否で順位が下がるのか
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広告掲載見送りで順位が下がるのは、「標準」タグを利用してお店を並べた場合。標準タグには、広告優先と明記してある。
- 熱海で点数が大きく下がったラーメン店は、近年の口コミ投稿頻度が下がっているお店。新しい情報を優先するアルゴリズムになれば、やむを得ない点。
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高崎ではラーメン店の順位に大きく変動があったが、すべて広告未掲載店。
- 食べログの点数は3.0からスタートし、実績があるユーザーが、多く書き込まなければ点数は動きにくいのが常識。下げられたとする店は、口コミが少ない。
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店主は、点数や順位に一喜一憂せず、料理と技術を追求すべし。評価を得るのは簡単ではないが、得られないからと言って、お客やシステム批判は慎むべき。
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お客の側は、口コミを書き込む場合に、独断にすぎる断定をさけ、言葉遣いにも注意すべき。