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都市伝説? プレミアムフライデーは失敗したのか

2016年2月24日、月末の金曜日に15時退社を奨励する、プレミアムフライデーが開始されました。しかし、導入(実施)する企業はごくわずかで、都市伝説の域に。失敗もささやかれていますが、実態はどうなのでしょうか?

プレミアムフライデー導入(実施)されますか?

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さまざまな業界の方に、プレミアムフライデーの導入について、尋ねてみました。

情報通信業(法令系)

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法律遵守には敏感な業界ですが、プレミアムフライデー導入は経済産業省などが中心となって「推進」されているものであり、法律や条例ではないという背景かも知れません。

民営化した元国有企業

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元国有企業も、経済産業省が旗振りをするプレミアムフライデー導入には、乗らないようです。

本来は、普段の有給消化率や待遇とは無関係に、プレミアムフライデーを実施してもよいのですが、労働者側が、いつしか会社の立場を代弁するようになってしまうのが、日本の実情です。

地方公務員(区役所)

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公務員の場合、開庁時間等が条例で定められているようです。そのため、経済産業省の「導入推進」よりも、法律や条例が上位に捉えられているのかもしれません。また、公務員は恵まれているという見方もあるため、率先しては、窓口を閉めづらい状況でしょう。

まず官公庁、地方行政を押さえておかなかった経済産業省の段取りには、疑問も感じます。

IT企業(オウンドメディア運営等)

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IT企業の労働環境はシビアな場合が多いので、プレミアムフライデーの実施は、後手に回るかも知れません。

そもそも、質問にお答えいただいた方は勢いのある20代で、楽しいから仕事はきつくてもさほど気にならないという考え方です。こういった働き手の多さも、プレミアムフライデーが広がるためには、ネックになるでしょう。

労働時間の長さを気にしないという向きは、いくつかのパターンがあります。

  1. 【成長・楽しい】仕事が合っており、成長でき楽しいから、気にならない。
  2. 【若い・体力高い】まだ若く体力があるため、さほど気にならない。
  3. 【プライド】職業人としてのプライドから、仕事の質が労働時間より優先。
  4. 【ワーカーホリック】特に趣味があるわけではないので、別に構わない。
  5. 【人事評価】人事評価が気になるので、改善をとても言い出せない。

こういった、労働者の考え方の相乗効果が、プレミアムフライデーに限らず、日本の労働環境の改善を遅らせていると考えます。

英会話スクール

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英会話スクールのような、会社員が余暇時間に通うサービス業では、プレミアムフライデー実施は当然難しいと思われます。20代のこの方の回答には「3時以降のレッスンが多いため、プレミアムフライデー導入は、全社的なメリットに薄いのでは」と会社の立場への配慮が見られました。

しかし、サービス・販売業であれば、プレミアムフライデーに忙しく働いてもらう分、経営者が、翌週に順番に半日休を設定するなどの工夫をするのが、本来の姿でしょう。サービス・販売業は、人材確保が厳しくなっており、もっと待遇に敏感になってほしいところです。

理想論に過ぎませんが、社員や出入りの業者にしっかりと「接遇」ができない企業は、サービス・販売業としては、大成が難しいと考えています。

受験予備校

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受験予備校では、夕方から授業が始まるのが普通で、プレミアムフライデーの導入は厳しそうです。しかし、予備校は月4回のカリキュラムで動きますので、本来第5週がある月には、講師や職員に休みを与えやすい環境にあります。それをしない、日本の労働の風土の問題だと感じます。

東証一部上場のソフト開発会社

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出ました!「そもそも知らなんだ」

保険業界(フルコミッション営業)  

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フルコミッション営業とは、成果給ではなく、交通費等の経費も支給されない完全歩合制の勤務形態です。その分、日中の行動など、ほぼフリーですので、プレミアムフライデーの実施とは最も遠い存在かも知れません。

ただ、顧客からもプレミアムフライデーの話題が出ていない点は、気になります。導入するか、しないか以前に、ほとんど関心を持たれていない(あるいは、会社の雰囲気から言い出せないし、どうせ実現もしないので諦めている)のかも知れません。

私立高校

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私立高校でもプレミアムフライデーの導入は望み薄のようです。過去に週休2日制を学校に導入する際には、ゆとり教育カリキュラムとセットで、ごり押しをしたのですが、今回は様子見の構えかもしれません。またカリキュラムの消化の都合もあるでしょう。

 介護福祉業界

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  • 「業界としての、プレミアムフライデーの導入への動きは聞きません」
  • 「シフト見たら普通に『遅出』になってた(笑)。もともとシフト制だから、プレミアムフライデーは関係ないよ」

飲食業

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「業種によっては、土日祝日関係ない企業が多いにも関わらず、ほぼ公務員や大手企業を対象にした様な『イベント』に、メリットを感じません」

飲食業は、土日祝日すら無関係の勤務形態です。今回のプレミアムフライデー実施に関しては、別世界の話という感があるようです。

不動産業

「話題に出ることは、ありませんね」

小売・サービス業(写真、眼鏡販売等)

  • 「営業時間が決まっているので、他人事です」
  • 「別次元の話。はっきり言って不要」
  • 「正直、反応は薄い」

販売・サービス業は、開店時間が売上や信頼につながるため、店を閉めにくいのが実情です。プレミアムフライデーの議論では、蚊帳の外に置かれた感じをお持ちになるようです。また、騒いでいるのも、デパートや量販店など大手の、それも経営者だけかも知れません。

就職支援会社

「全く話題に上りません」

一般に、会社員は、自分への評価や査定が気になり、経営陣は寝た子を起こさずということで、話題にすらできない雰囲気があるようです。月にたった数時間の勤務時間短縮で、労働者にとっては、かなりほっとする話になるのですから、その程度の英断?ができない経営者が多いことを、残念に思います。

医療機関

「関係ないのであまり話題にならない」

24時間交代制あるいは、開院時間が決まっている医療機関では、プレミアムフライデーの導入は難しい面があるようです。

損保会社 

会社は有給消化等で早く帰るように促してますが、社員としては月末の忙しい時期にそんな取り組みされても休めないし。 そもそも、そんな理由で休める雰囲気ではありません」

会社としてはプレミアムフライデーを考慮している点は、評価できますが、月末の多忙なタイミングでは難しいとのことです。プレミアムフライデーは、給料日直後に設定することで、消費熱を高める狙いがあります。そのため、月末が基本になりますが、月単位で業務が動く会社は非常に多く、月末がダメなら第1金曜日といった施策も必要かも知れません。

電工精密機器

「プレミアムフライデーは、よく話題に上がります。希望者も多いです」

会社側がプレミアムフライデーの取得を認め、社内で話題になり、かつ実際の希望者も多いという回答は、この1件だけでした。

プレミアムフライデーは失敗? 会社員も意識改革を!

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プレミアムフライデー導入は、基本的には経営陣の責務です。月にわずか数時間の問題であり、生産性の向上や待遇改善のPRにつながるわけですので、基本的には導入すべきでしょう。先日伊勢丹が、来年度より年始休業を増やすことを検討し、サービスの質を上げると発表しましたが、宣伝効果も大きかったはずです。

しかし、労働者の側も、現状よりはプレミアムフライデーを話題に出さなければならないと思います。その際に、ネックになるのは、一部の「いくらでも働ける」という社員の存在です。会社員同士も競争がありますので、水が低いほうに流れるように、低待遇を意に介さない人の発言や行動に、周囲が合わさざるをえない力学が働きます。

  • 【成長・楽しい】仕事自体が合っており、成長でき楽しいから、気にならない。⇒ 自分もそうだったので、気持ちはわかりますが、様々な働き方を許容すればよかったと反省しています。
  • 【若い・体力高い】まだ若く体力があるため、さほど気にならない。⇒ いつか体力は衰えます(笑)
  • 【プライド】職業人としてのプライドから、仕事の質が労働時間より優先。⇒ 自分もそうだったので、気持ちはよく分かりますが、生活の質を整えてこそ、本当に良い仕事ができると発想を切り替えます。
  • 【ワーカーホリック】特に趣味があるわけではないので、別に構わない。⇒ 副業は魅力的(笑)
  • 【人事評価】人事評価が気になるので、改善をとても言い出せない。⇒ 社員はお互いにけん制しあってしまう。会社や組織の弱点です。人事権を経営陣に握られているのが、会社員の弱みですが、これを何とかしたい(解決策はわからない)。

www.jarna.jp(リンクとタイトルはクリックできます)

(まとめ)都市伝説? プレミアムフライデーは失敗したのか

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  • 当面実施しない、または話題にも上がっていない。 18社
  • 制度が導入され、希望者が有給休暇を取得し15時に帰社する予定。 1社
  • 会社は制度導入を推奨するが、実際に15時に帰る雰囲気はない。 1社

筆者の周辺やブログの読者の方へのアンケートのため、統計分母が少なく、統計としての価値はありません。しかし、想像以上に導入(実施)しない企業が多く、また「話題にならない」「話題にできない」状況が、日本の労働環境の深刻さを感じます。

当ブログは、誰か「別な人」が作る社会に引導を渡すをテーマにしています。私自身も、長い会社員経験から、月に1度でも明るいうちに帰宅できること、スーパーで買い物し、自宅で食事を作ることができることが、いかに重要かよく理解しています。

企業経営者が誤解しているのは、緩めれば労働者はサボるのではないかということです。しかし、日本人は、結果逆算型の思考にはやや弱く、内実の質を高める傾向があると感じます。そしてそれは、お金や評価のためではなく、そもそもそうするものだという「心性」を心の内に持っているのです。経営者は、プレミアムフライデーを積極的に「強制」することで、生産性が上がるということを、もっと理解してほしいと考えます。

www.jarna.jp(リンクとタイトルはクリックできます)

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【追記】記事編集に先立って行ったアンケートに、後日お答えいただいた方がおりました。こちらに追記いたします。

当面実施しない、または話題にも上がっていない。

  • 大手外資系ITベンダー「周囲は無関心」
  • 病院「話にも上がらない」
  • 建設業「内勤の人間しか無理だよねと言う話題のみ。全く実現性がない印象」

制度が導入され、希望者が有給休暇を取得し15時に帰社する予定。

  • 医薬品メーカー「もともとフレックスのため、今回に限らず自分の都合で可能。時間の有効活用が望めると喜んでいる」