JAXAがプログラミングミスとデータ送信ミス(人為的ミス)で300億円かけた衛星がお陀仏に。まだ詳細不明だから仕方ないが、夜のニュース番組の追及姿勢の弱さに違和感。300億円と一口に言うけど、医療費や食糧費に回したら何人助かるよ?熊本地震の被災自治体への募金もまだ3億円程度のはずだし、かなり追及されるべきミスだと思うけど。地球周回の衛星は技術レベルがそれほど高くなく本来ミスは許されない。民間企業なら多数が会社を追われることになるけど、JAXAだとそんなことはないんだろうな。ネットでも 「残念だけど今回の失敗を次につなげてほしい」みたいな寛容な声がありこっちこそ残念だよ。
同じマスコミも舛添知事が週末湯河原に公用車で往復していたことには、もっと鋭く追及を進めている。まあ新幹線こだま号で往復していればイメージは良いだろうが、知事職にはそこまで時間はないのではないか?車中も携帯電話オンにして書類をチェックする責務があるわけだから、民間人の時間感覚から不用意に批判するのはどうか。健康の維持も仕事のうちである(と舛添に投票しなかった人間でも思う)。しかし、ネットでも「逸脱した無駄遣いと別荘で公務が問題。もう辞めていただきたい」みたいな流れ。
結局400万円みたいな想像しやすいお金のことは追及して、300億だと思考停止してしまうのか?同じニュース番組で、底辺の仕事に就き奨学金が返済できず苦しんでいる人が多いと報道されてたけど、いま日本中にいくばくかのお金があれば救われる人がどのくらいいると思っているのだろうか?基本的なミスで300億円をドブに捨てたJAXAよりも、週末くらい楽させてよと400万円を湯河原のお湯に流してしまった都知事の方が罪は軽いと思う。
このエントリー書いたら湯河原のラーメン店飯田商店に行きたくなった。あとお陀仏は死語。
(追記)たくさんの訪問を頂きありがとうございます。
寝る前に書いた日記的なエントリーで、意図したわけではありませんが誤解を誘導する筋書きだったため、多くのご意見をいただきました。炎上的なお祭り騒ぎが終わり、google検索からのご訪問が増えたため、その「からくり」を少し追記しておきます。
・高度な宇宙技術開発はすべて失敗が免責されるべきだが、JAXAの今回の件は初歩的にすぎ範疇(はんちゅう)が異なるはずである。
・舛添のファーストクラスとスウィートはアウトだとしても、「公用車」はまた別問題である。
上のエントリの趣旨はこの2つに集約されます(公正を期すため、追記より上の加筆修正は一切行っていません)。多くの方が、①JAXAのこれまでの実績からJAXAの失敗なら許してあげたい、②開き直る舛添が憎たらしい(笑) この2つの先入主によって記事を読まれていると思います。少なかったですが、冷静に読んで頂いた方もおられます。
しかしネットの記事は、基本的にざっと読まれるものです。むしろ読まれているというよりは、タイトルから各自のスキーマ(過去に蓄積した思考体験群)が参照され、結論を予想して「決めていく」というような過程を取ります。上の記事を「増田風」(=私的日記帳の意味)のカテゴリーでなく、丁寧に記述していれば誤解は生まなかったものの、ここまでの反響も生まなかったはずです。
誤解を生んだがゆえに非常に優れたコメントがたくさんつきました。この後にセレクションしてあります。文章というのは面白いもので、正面から丁寧に書いたものでなく、すっかすかに書いて投げた方が関心を集めることがあります。しかしこのブログはどちらかと言えば正攻法の文章をメインに進めています。今回はあくまで「事故」です。
科学において、失敗は責められるべきものではない。
「けがを恐れる人は大工にはなれない。失敗をこわがる人は科学者にはなれない。科学もやはり頭の悪い命知らずの死骸の山の上に築かれた殿堂であり、血の川のほとりに咲いた花園である。」
寺田寅彦『科学者とあたま』
この文章に5年ほど前に出会い、科学においては多くの失敗が広大な裾野を形成していることを理解し今回のエントリーでもunderviewとなっています。しかし今回のJAXAの「ひとみ」の事故は、先端科学でなく「仕事」の範疇の話ではないかと思います。
JAXAの今回のミスは、先進科学分野というより仕事上のミス。
「地球から遠く離れて飛行する『はやぶさ』や『あかつき』は、衛星の技術としては非常に挑戦的で難しい部分もあるが、今回のような地球を周回する衛星では、これまでの技術開発の蓄積がある。こうした衛星での失敗は、JAXAの中にもショックというか、危機感があるのではないか」
JAXA元責任者吉冨進氏
「今回の失敗の原因がプログラミングのミスということであれば、極めて初歩的なミスで、問題はかなり深刻だ」
千葉工業大学惑星探査研究センターの松井孝典所長
「確かにプログラマーとしては100%バグなしはありえないですが、300億円という大金を動かすのに、そんな人為的なミスが発生しリカバリーもできない、事前チェックで見逃すのは開発過程に明らかに欠陥があります」
コメントを頂いた「すど」様
現在検証中の案件であり即断は禁物ですが、会見で内部関係者が早々に白旗を揚げ、元責任者も類似のコメントを発表しています。
舛添氏は個人的には1勝2敗
下が個人的な意見です。
ファーストクラス× スウィートルーム× 公用車〇
公用車〇の理由は「長たる者」の厳しい時間の流れを真剣に想像すれば、許容すべきではないかということです。私は政治的には舛添氏を支持しませんが、仕事に取り組む1人の人間としての生活は容易に想像ができます。これは私がブラック企業経験を持ち、現在独立事業者であることからそう思えたのかもしれません。新幹線では電話ができず都政の守秘義務も果たせません。
1人は1人の人生しか送れないものですが、知事への好き嫌いを抜きに想像力を働かせることが必要だと考えます。またファーストクラス、スウィートルームの件と混同され判断されてしまうのは仕方がないですが、慎重に議論すべきです。窃盗犯だからと、その町で起きた全ての犯罪を押しつけるのはNGです。またテレビ(グッディ)からの情報ですが、ファーストクラスは都の規定内であることも問題を複雑にしています
・人が過去に為したことの蓄積をもとに判断されるのはしかたがないことです。JAXAはこれまでの加点が膨大で、舛添氏は減点を積み重ねていたのでしょう。
・しかし、新たに起きた「ひとみ」「公用車」の問題を、その先入主を導入して処理してしまってよいのか、その問題を提起したいと思います。
はてなのサービスは上手くできているもので、お祭り騒ぎで記事が拡大しながら、良質なコメントがついていくような面があります。ブロゴスのような一方通行のメディアでありませんし、個人が議論の主役になることができます。この記事にはてな外から着地された方も、読者登録していただけると幸甚です。
(追記2)コメントが多くなり、時間的にすべてお読みになれない方のために、特に造詣が深いと思われるコメントを転載させて頂きました。
すど様
プログラム開発過程の欠陥は明白 背後に組織的問題が潜む可能性
なぜその二つを同列に語ってしまうのか。タイトルに問題があると思いますが、それは置いておいて、筆者の考えに賛同します。
技術的発展の為や未知の挑戦での失敗なら許容できますが、今回は前例のあるチェレンジングでない技術で、人為的なミスによるものです。きちんとしたチェック体制があったのか、開発体制や組織に脆弱なところがあったのではないか、追求と原因究明を深く行わないとまた起こると思います。
確かにプログラマーとしては100%バグなしはありえないですが、300億円という大金を動かすのに、そんな人為的なミスが発生しリカバリーもできない、事前チェックで見逃すのは開発過程に明らかに欠陥があります。
開発に欠陥が発生するのは一人のミスだけでなく、上下関係や全体のモチベーション風通し、人員体制など組織として何かしら問題を抱えているからだと私は思います。
今後も事業を継続するなら、失敗した欠陥の原因究明だけでは済まない問題ですし、今後の開発力を高めるためにも追求はしっかりと行って欲しいところです。
日本の宇宙開発の実績を信頼 想定外の事象があった可能性
JAXAの報道については、一般向けにかなり単純化した説明の可能性があります。工場設備の管理を行っている私の経験から言えば、人は必ずミスをするという前提でシステムには想定される限りの何重もの安全弁を設けるものですが、そんな努力をあざ笑うがごとく複数の条件がそろったときに初めて発生する不具合が存在します。たしかに今回のプログラムミスはとどめを刺したのかもしれませんが、必ずその前段階で複数の想定外の事態が組み合わさっていることでしょう。
ところで想定外事例は完全に0にすることは不可能ですが、科学技術は失敗事例も安全工学的に反映させ次回以降で同じ系統の失敗を防止することは可能です。これは得難い知見であり、何度も同じ失敗を繰り返すような場合は論外ですが、きっちり失敗をフィードバックする限り何十・何百年のスパンでみれば投資に対する回収効果の方がうわまります。宇宙開発は成功時の回収効果が絶大です。少なくとも世界各国と比べても非常に少ない予算で大きな成果を上げているのが日本の宇宙開発です。今回も失敗金額は大きいですが投資の一つとして長いスパンで見ていただければと思います。
一方、舛添さんについてはその投資に見合った回収が本当にされるのかが不明瞭で、0にできないミスとは異なり、完全に人為的な行為であるから叩かれるのでしょう。実際に要人と会談するのにスイートルームが必要だったならばここまで問題視されなかったのではないでしょうか。
悪印象が蓄積しやすい個人 過去に実績がある団体
例えば、「水と肝臓、どちらが重要か」という問いかけのように、種類の違う問題を同列に扱っている(比較する)ことがそもそもナンセンスだと思います。
ですが、それを承知でワイドショーやニュースにおいて、なぜ批判の熱量に差が生じるかを考えると、「どれだけ悪い印象を与えたか」がその鍵を握っているのではないでしょうか。
舛添知事のニュースが含んでいる悪い印象を考えてみると、
・責任の所在が明らかでありそれが特定の人間である
・私欲のために不正をしたように思えること
・税金が関係していること
・人を欺いているように思えること
などがあります。
これらとあえて比較してJAXAのミスがなぜ叩かれないのかを考えると、
・組織であるがゆえに責任の所在が曖昧である(国民が誰をバッシングすればわかりにくい、組織の構造的な欠陥に思える)。
・JAXAは過去に大きな成功を収めており、かつ、科学に失敗はつきものという印象から、税金であってもある程度仕方ないという考えが一般に浸透している。
・税金を詐取して特定の誰かが利益を得ているわけではない。
と、なるのではないでしょうか。
また、JAXAはおそらく問題を受けて自発的に解決をすると期待できますが、知事の件は不正である場合、周囲がバッシングしないと自発的な解決は望みにくいと考えられることも挙げられます。
他にも、金額だけで考えますと、国立競技場の問題がもう一桁上の事件を与えているので、300億円も大きな額ではありますが、その額に免疫ができているのもあるかもしれません。 このように、舛添知事の件の方が「悪い印象」を与えているのは明らかなので、批判に差が出るのだと考えます。
これらは感情論に準ずるところではありますが、かといって、金額で善悪を判断することが論理的とも言えないので、批判とは難しいものです。
通りすがり様
基本的な科学技術でも研究者の免責が保証されるべき
(中略)宇宙開発の歴史は信じられないような失敗の繰り返しです。 たとえば、1999年のMars Climate Orbiterの失敗は管制官がやり取りする数値の単位をヤードポンド法とメートル法で取り違えたというものでした。 また、たとえば鉄道という技術的には枯れきった分野でも、21世紀に入ってもなお、ヒューマンエラーの積み重ねで多数の死者が出る事故が何回も発生しています。
事故や失敗に対して「起こるはずのない事故であった」というレッテルを張ることは、原因追求の目を「組織・しくみ・プロセス」ではなく「問題を起こした当事者個人」に向けさせ「その人間を罰することにより再発防止とする」という方向に導くものです。 このようなやり方は、決して本質的な問題解決につながらず、かえって問題を潜在化させてより拡大させるだけ、ということも歴史が与える貴重な教訓です。
もし仮に福知山線の事故に対してJR西がすべての原因を運転手の過失として処理していたとしたらどうでしょうか? 今回のひとみのトラブルをプログラマのミスに強く結びつけるのはそれと同じ誤った対応と思えます。
従いまして、前回の主張の繰り返しになりますが、原理的に失敗の可能性が0にできない事柄において失われたコストと、1個人の判断により容易に回避できる妥当ではないコストを比較して論を示すのは上記のような誤った方向に展開された暴論であり、訂正されることを強くお勧めするものです。
どんなに基本的な科学技術であっても事故率はゼロでない。今回の事故を「起こるはずがない」として個人に責任を転嫁するわけにはいかない、とのご意見でそれ自体説得力があり、元エントリへの訂正も考えました。しかしながら今回の件は、異例の早い段階でJAXA関係者や専門家が初歩的なミスで必須となるバックアップの仕組みが機能しなかったことを明らかにしています。専門的な目から見ても、技術以前の問題であった可能性があります。
仮に先端技術への従事者があらゆるミスの免責を受ける権利を持つとしても、技術以前の問題で免責を受けられるとしたら、常にその地位を賭けて仕事に取り組むエンジニアや医療従事者は納得できないでしょう。彼らが誰の目から見ても最低限の義務を怠った場合には免職や地位の異動の処分を下されます。
十分にコメントを熟読の上熟考しましたが、訂正を見送らせていただきました。「民間企業なら多数が会社を追われることになるけど、JAXAだとそんなことはないんだろうな」が削除を検討した箇所です。「1個人」でなく組織として責任を取るべきだという前提もご理解いただけると幸甚です。