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【天才降臨】幼馴染の次男君のツイートに抱いた複雑な思い

【天才降臨】幼馴染の次男君、0点だった国語の解答が天才だった。。先生様、これは💯(100点)だと思う。漢字テストの採点に関する、こんなツイートが話題になっています。

※ツイッターの転載について、@jinn_n様のご快諾を頂きました。

ひらがなで指示された、次の日づけを答案に書き、0点となっています。

4万件以上リツイートされたこのツイート。少し複雑な気分になりました。もし次男君の将来を考えるなら、「天才降臨」「違う考え方も認めて」などと言っている場合ではなく、国語をしっかりと教えてあげるべきです。

つぎの 日づけの ひらがなを かん字に なおしましょう。

 と問題文にあります。

多くの子どもは、「つぎの」がかかる(修飾する)先の候補として、直後の「日づけ」だけでなく、「ひらがな」も考慮します。

例えば、「古い 江戸時代の 本を……」と来た場合、日本語が運用できる子どもは、「古い」を短期記憶し、「江戸時代の」にはかからないことを認識しつつ、「本」にかかることを確定する手順を踏みます。そもそも江戸時代は、古い時代ですから、古いがかかる可能性は0%という判断です。

つぎの 日づけの ひらがなを かん字に なおしましょう。

 と問題文にあります。

問題文の場合は、「つぎの」が日づけにかかる可能性を留保しつつ、「ひらがな」まで読み進め、もしその留保が正しいなら、意味をなさないことに気づき(次の日づけを表す平仮名など存在しない)、「つぎの」を正しく「ひらがな」に接続するという手順を踏みます。

この手順は少し複雑ですので、次男君が混乱したのは仕方ないです。しかし、ほかのクラスメートが設問の日本語を取り違えなかったのは、なぜなのでしょうか? それは、前提知識(スキーマ)の助けを得ているからです。

小学校1年生が日づけの漢字を習うのは、教科書にもよりますが、12月前後かと思います。約8か月間、漢字の小テストを受け続けている訳です。そのため、国語の漢字の小テストが「ついでに算数の足し算を同時に問うはずがない」という前提知識(スキーマ)があるはずです。

以上のように、設問の修飾・被修飾の関係は少し難しく、次男君はムムッとなったかも知れませんが、前提知識(スキーマ)の助けも借りて、正しく日本語を読めなければいけなかったのです。

修飾・被修飾の関係は、読解力の根幹

修飾・被修飾の関係は、読解力の根幹をなし、それ専用の問題集が出ているほどです。

論理エンジンは、進学に力を入れている私立学校では、多く導入されています。延々と、主語述語・修飾被修飾のトレーニングが続きますが、それほど重要なのです。

語弊があるかも知れませんが、漢字1つ、地図記号1つを間違えたのなら、「天才的答え!」「それもありかも」と笑って済ませても構わないですが、修飾・被修飾関係の取り違いは緊急課題です。「天才降臨」「違う考え方も認めて」「誤認を防ごうとするなら……と出題すべき」などと言っている場合ではなく、次男君を先生のところに促し、なぜ0点なのか聞きに行かせるべきでした。

そうすれば小学校の先生なら、目のつけどころの面白さを認めつつ、次のような会話が成り立ったでしょう。

  • 先生:次男君。説明する言葉はね、すぐ後を説明するとは限らないんだよ。例えば、「大きな マツコからもらった 大福もち」という言葉の場合、何が大きいの?
  • 次男:マツコ・デラックスも大きいけど、大福もち。あっ、大きながすぐ後を説明していない!
つぎの 日づけの ひらがなを かん字に なおしましょう。

つぎのと来たら、日づけだと思うのも無理はないですが、ひらがなにかかる可能性もあることを、分かってくれるはずです。

小学校の先生も忙しいので、全員の各教科ごとのクセを把握するのは困難です。しかし、保護者が質問をするよう仕向けてくれれば、すぐにしっかりした指導を入れてくれます。「天才降臨」「違う考え方も認めて」「誤認を防ごうとするなら……と出題すべき」というような議論の前に、小学校の先生を信頼し、すぐに次男君を送り出してほしかったというのが、私塾ですが教壇に立ったことのある者の思いです。

別の意味で次男君に天才肌を感じる

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とはいえ、この答案を提出した次男君は、色々な可能性を持っているかも知れません。

文法的に誤読をしてしまったのはさておき、過去の漢字テストの様子の記憶も無視して、足し算を始めてしまった。少なくともせっかちであることが分かります(問⑨をしちがつ→しがつと誤読していることにも表れている)。せっかちな小学生のなかには、逸材が紛れ込んでいるのは事実。好奇心旺盛で、頭の回転が速いからです。

ここからは完全な推測で、会ってみなければ分かりませんが、理系の素養があるのかも知れません。国文法も前提の記憶(スキーマ)も無視し、すぐさま計算をしてしまった。小学校の先生は、算数(数学)も教えられますので、様々な素養を発見してくれます。現在小学校の先生にもサービス業のような対応を求める保護者も増えていますが、専門的な教育を受けている小学校の先生を、ぜひ信頼してください。

前提知識(スキーマ)が面白い

前提知識(スキーマ)が、読解に大きく影響していることを示す、有名なクイズがあります。さて、次の文章は、何の話をしているでしょう?

新聞の方が雑誌よりいい。街中より海岸の方が場所としていい。最初は歩くより走る方がいい。何度もトライしなくてはならないだろう。ちょっとしたコツがいるが、つかむのは易しい。小さな子どもでも楽しめる。一度成功すると面倒は少ない。鳥が近づきすぎることはめったにない。ただ、雨はすぐしみ込む。多すぎる人がこれをいっせいにやると面倒がおきうる。ひとつについてかなりのスペースがいる。面倒がなければ、のどかなものである。石はアンカーがわりに使える。ゆるんでものがとれたりすると、それで終わりである。(西林、2006、p.45)

いかがでしょうか? 何の話か分かりましたでしょうか?

↓↓↓ 答えがあります ↓↓↓

 

 

 

 

 

 

実は、凧あげの話です。自分が凧あげをした体験や、テレビなどで凧あげの風景を見た体験を思い返し、前提知識(スキーマ)を活性化させてから、もう1度文章を読んでください。

新聞の方が雑誌よりいい。街中より海岸の方が場所としていい。最初は歩くより走る方がいい。何度もトライしなくてはならないだろう。ちょっとしたコツがいるが、つかむのは易しい。小さな子どもでも楽しめる。一度成功すると面倒は少ない。鳥が近づきすぎることはめったにない。ただ、雨はすぐしみ込む。多すぎる人がこれをいっせいにやると面倒がおきうる。ひとつについてかなりのスペースがいる。面倒がなければ、のどかなものである。石はアンカーがわりに使える。ゆるんでものがとれたりすると、それで終わりである。(西林、2006、p.45)

今度はよく分かったはずです。裏を返せば、私たちは、前提知識(スキーマ)の力を借りず、辞書的な意味だけでは日本語を読めないのです。そういう意味で、国語力をつけるには、外遊び、様々な体験、社会・文化の知識が不可欠なのです。

国語科の先生は、こんなことまで考えながら、何とかして児童・生徒の力を引き出そうと、必死の思いでテストを作っています。今回話題になったのは、先生が作成したテストではなく、業者のテストだと思いますが、中の人は教員経験を持つ人も多くいます。

センター試験にせよ何にせよ、テスト問題に不満を持たれる方は多く、特に国語は誰もが議論に参加できる(ように見える)ため、やり玉に挙げられがちです。しかし、たった1枚のテストにも、児童・生徒への思いが込められています。

漢字テスト

この小テストも、なぜ作問者が「さんがつ みっか」を初問に置いてあげたのかなどと考えると、作問者と気持ちが通じ合うような気がします。

ちょっと面白いのが、担任の先生が「さんがつ みっか」に1度〇を打ってしまったこと。つまり、この易しい初問は、それまでに採点してきた5人なり10人なりが、みな正答していたのでしょう。これもスキーマによる、読み違いの亜種とも言えます。

国語っておもしろいなあ!

www.jarna.jp

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